根管治療にマイクロスコープを保険適用できる?条件やポイントを解説
虫歯の悪化により根管治療を行わなくてはいけなくなった際、もっとも効果的に治療できるのはマイクロスコープを用いた治療です。アメリカではほぼ100%の導入率を誇るマイクロスコープですが、日本では認知度が低く、歯科医への導入率は5%以下といわれています。今回は、「マイクロスコープとはどのようなものなのか?」「保険治療を受けられるのか?」について解説するので、より良い根管治療の方法を探している人は参考にしてみてください。
保険診療内でマイクロスコープを使った根管治療はできるのか?
そもそもマイクロスコープとはどのような治療方法なのか、マイクロスコープを使った治療は保険診療または自費診療どちらになるのか、などの疑問について解説します。マイクロスコープの基礎知識を身に着けたうえで、治療を検討しましょう。マイクロスコープとは
マイクロスコープとは、デジタルカメラを搭載した顕微鏡のことで、歯科治療以外にもさまざまな分野で活躍しています。肉眼では視認できない細部まで拡大して確認できるため、車・航空関連などの高い精度が要求される部品の品質管理にも使用されているようです。幅広い活用方法があるマイクロスコープは、以下3つの特徴から歯科治療の分野でも重宝されています。- 最大20倍まで拡大できる
- ライトで視野を確保できる
- 治療を録画できる
最大20倍まで拡大できる
マイクロスコープは、治療箇所を最大20倍まで拡大できます。そのため、肉眼では捉えきれない小さなむし歯や初期段階のヒビも見つけられるようになりました。これまでは、目視で確認できない部分の治療は歯科医それぞれの勘や経験に頼っていましたが、マイクロスコープを使用することで正確に治療が行えます。ライトで視野を確保できる
マイクロスコープにはLEDライトが搭載されていて、暗く視野が確保しにくい口内でも明るい状態で治療が行えます。従来の治療方法では見落としてしまっていたむし歯も見つけられるため、治療精度が各段にアップしました。歯の不調が悪化する前に治療を行えるので、歯の健康寿命を延ばすことにつながります。治療を録画できる
マイクロスコープで撮影している映像は、モニターに映し出して患者さんも一緒に確認しながら治療できます。治療の透明性が高くなるため、患者さん自身も安心して治療を受けられるでしょう。また、治療内容を録画して再確認することもできるので、治療後の説明に映像を使用することも可能です。マイクロスコープの活用方法
マイクロスコープは、虫歯治療以外にも予防歯科や審美歯科など、幅広い用途で使用できます。マイクとスコープの活用方法について、以下の項目から解説しましょう。- 虫歯治療
- 歯周病・虫歯予防
- 根管治療
- 歯周病治療
- 審美歯科
虫歯治療
カリエスチェックの際にマイクロスコープを使用すると、肉眼では見逃してしまうような小さなむし歯を発見できます。虫歯が進行する前に治療できるため、歯を大きく削る必要がありません。マイクロスコープで虫歯を確認しながら治療を進めることで、虫歯を取り残したり、歯を削りすぎたりすることもないため、虫歯再発の心配が少ないことも魅力です。歯周病・虫歯予防
これまでのクリーニングは、経験や勘を頼りに手探りで行われていたため、歯周ポケット内部の歯石や歯垢が完璧に取り除けていなかったり、出血したりすることがありました。マイクロスコープを使って歯周ポケットを確認しながらクリーニングを行うことで、出血を極力抑えて内部の汚れをきれいに掃除できます。従来よりもプラークコントロールが容易になるため、歯周病や虫歯予防に大きく貢献しているといえるでしょう。根管治療
根管は細く複雑な形状をしているため、従来の治療方法では汚れを取り除ききれないことがありました。汚染物質が残ったまま治療を進めてしまうと、歯髄炎によって骨が解けてしまう可能性があります。マイクロスコープを使って根管の様子を確認しながら治療を行うことで、汚染物質を確実に取り除けるため、再感染や再治療の心配がありません。歯周病治療
歯周病の治療には、プラークコントロールが欠かせません。マイクロスコープを使った歯周病治療では、歯周ポケット内部をきれいに掃除したり、歯茎周囲の状態を確認したりしながら汚れを取り除きます。肉眼では見えない小さな隙間もマイクロスコープで確認しながら掃除をするため、効果的に歯周病の改善が可能です。審美歯科
インプラントやセラミックの被せ物を装着する際に、肉眼だけの確認では隙間ができてしまいます。インプラントや被せ物に隙間ができると、歯茎の黒ずみや虫歯、インプラント周囲炎が起きやすくなってしまうため注意しなくてはいけません。マイクロスコープを使用して人工歯を取り付けることで、ミリ単位の調節が可能になり、トラブルが少なく審美面でも優れた歯並びを目指せます。マイクロスコープのメリット
マイクロスコープの特徴を知り、「根管治療にマイクロスコープを取り入れたい」と考え始めた人もいるでしょう。しかし、マイクロスコープにはメリットだけではなくデメリットもあります。マイクロスコープのメリットは以下の通りです。- 治療精度が高くなる
- 再発率を抑えられる
- 歯の健康寿命が伸びる
- 治療内容を確認できる
治療精度が高くなる
マイクロスコープを使用した根管治療は、肉眼だけで治療をするのと比較して治療精度が高くなります。汚染物質をマイクロスコープで確認しながら治療を進めるため、確実に根管内部をきれいに洗浄できるからです。また、肉眼では見えない歯の不具合も確認できるため、1度の通院でしっかり歯の治療が行えます。再発率を抑えられる
根管治療の際に汚染物質が残ったまま治療を進めると、歯髄炎をぶり返すことがあります。しかし、マイクロスコープを使用すると汚染物質を取り残すことはありません。再感染を防げるため、何度も同じ治療をしなくて済みます。歯の健康寿命が伸びる
マイクロスコープを使った治療は、小さい虫歯や狭い箇所にある虫歯をしっかり取り除けます。それだけではなく、必要以上に歯を削る必要もありません。問題のある部位だけを治療できるので、歯の健康寿命を延ばすことにつながります。治療内容を確認できる
マイクロスコープについているカメラは、治療内容を録画することも可能です。そのため、あとから治療内容を確認できるのも魅力といえるでしょう。また、リアルタイムで治療内容をモニターに映し出せるため、患者さんはどのような治療を行っているか確認しながら治療を受けられます。マイクロスコープのデメリット
次に、マイクロスコープのデメリットを解説していきます。マイクロスコープのデメリットは、以下3つです。- 普及率が低い
- 治療に時間がかかる
- マイクロスコープを保険診療で行わない歯科医もある
普及率が低い
歯科治療先進国のアメリカでは、歯科治療にマイクロスコープを使用することが義務付けられています。しかし日本の歯科医では、3%~4%程度の歯科医にしかマイクロスコープが導入されていません。また、導入している歯科医でも、マイクロスコープの稼働率が非常に低いといわれています。治療に時間がかかる
マイクロスコープは、従来の歯科治療に比べて治療に時間がかかるといわれています。その理由は、これまで見逃していた歯の不具合も見つけられるようになったためです。そのため、通院期間や治療時間が長くなるケースが多いといわれています。マイクロスコープを保険診療で行わない歯科医もある
マイクロスコープは、保険適応条件に当てはまっていれば保険診療が受けられます。しかし、マイクロスコープを使用してかかる手間や時間に比べて、保険点数が低いことから、自費診療でしかマイクロスコープを使用しない歯科医もあるようです。マイクロスコープを保険診療で受けるための2つの条件
マイクロスコープを保険適応させるためには、国が定めた要件を満たす必要があります。条件に満たない治療は自費診療になるので、自分の症例では保険適応で治療できるのかどうか確認しておきましょう。マイクロスコープを使用した治療を保険診療するためには、以下2つのうちどちらかに当てはまっていなくてはいけません。- 歯根端切除術
- 大臼歯の根管治療
歯根端切除術
CT撮影をして歯根端切除術が必要と判断されると、マイクロスコープを保険診療で使用できます。歯根端切除術とは、根管治療を行っても症状が改善しない場合に行う治療で、病巣と歯の根を一緒に切ってしまうことで症状を改善させます。歯の根を切ったあとは、その部分に感染予防のためのお薬やセメントを詰めて治療終了です。大臼歯の根管治療
大臼歯の根管治療をマイクロスコープを使用して治療する場合、保険診療が可能です。大臼歯の根管は3本とされていますが、半数以上の人が4本目の根管を持っているといわれています。従来の治療ではこの4本目の根管を探しあてるのが非常に困難でしたが、マイクロスコープを導入することで根管治療の治癒率が高くなり、温存できる歯が増えました。マイクロスコープで根管治療を行う際の5つのポイント
マイクロスコープを使った歯科治療は、技術を習得した歯科医にしか行えません。マイクロスコープを使った根管治療を受ける際のポイントを以下で解説しましょう。- マイクロスコープを導入している歯科医を選ぶ
- マイクロスコープでの治療に保険が適用されるか確認する
- マイクロスコープを使用した治療実績が豊富な歯科医を選ぶ
- 信頼できる歯科医を選ぶ
- ラバーダムを使用した治療を行っている