奥歯をインプラントにするメリット・デメリットとは?奥歯の必要性についても解説
奥歯は人間の身体に大きな役割を果たしており、1本でも失うと様々なリスクがあります。
失った奥歯を補う治療法として、入れ歯や入れ歯やブリッジ治療以外に、インプラント治療が注目されていますが、奥歯のインプラント治療とはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、奥歯のインプラント治療の特徴とメリット・デメリットについて解説します。
また、奥歯の必要性についても詳しく説明しますので、「奥歯は人から見えない部分だから」「1本くらいなくても大丈夫」などと放置せず、ぜひ最後までご覧いただき、治療を検討していただけたらと思います。
奥歯の役割とは
歯には前歯と奥歯に分かれていますが、それぞれ異なる役割があるのです。
奥歯は物を噛むためだけにあるのではありません。まずは、意外といられていない奥歯の大切な役割について説明していきます。
「奥歯が1本くらいなくても問題ない」と考えている方は、奥歯の必要性について理解しましょう。
効率よく食事をする
歯は生える位置によって種類が異なっており、奥歯は臼歯と呼ばれるものです。
臼歯は、食べ物を噛み砕いて細かくしたり、すり潰したりする役割を担っています。
奥歯が1本でもなければ、食べ物を噛み砕く効率が下がり、食事が進まないだけでなく、消化器官に負担をかけて体調に悪影響を及ぼす危険性もあるのです。
効率よく食事をするためには奥歯を失わないようにしなければなりません。
顔のバランスを保つ
奥歯を失うと、顔のバランスが崩れてしまう可能性があります。
もし片方の奥歯がなければ、奥歯がある方ばかりで噛むようになるので、噛む筋肉が左右で変わってしまい、左右の顔のバランスが違って見えてしまうのです。
また、奥歯がなければ噛み合わせが深くなり、前歯にぶつかるようになるため、出っ歯になるリスクもあります。
顔のバランスを保つためにも奥歯が必要です。
発音がしっかりできる
奥歯は発音においても重要な役割を果たします。
どの部分の歯にも言えますが、歯を失うとそこから息が漏れてしまい、発音が不明瞭になるのです。
奥歯を失うと「ハ行」や「ラ行」の発音が悪くなるといわれています。
運動が効率よくできる
重いものを持つとき、スポーツで瞬発的な力を出すときなどで、奥歯を強く噛み締めることがありますよね。
これは、しっかり奥歯を噛み締めると大きな力を発揮するとされているからです。
左右で顎の筋肉のバランスが崩れていると、身体全体のバランスも崩れてしまうので、バランス感覚を保つためにも奥歯が必要になります。
物忘れを予防する
奥歯で噛むのは、人の認知機能にも大きく影響します。
奥歯でしっかり噛むと、脳が刺激を受けて活性化されると言われているのです。
それによって、物忘れや認知症のリスクを下げたり、集中力を高めたりする効果が期待できるでしょう。
奥歯を失ったときの治療法はインプラント治療が最適?
奥歯は食べ物を噛み砕くためだけではなく、人が快適に生活していくうえでとても重要な役割を担っています。
では、奥歯を失った場合にはどのような治療法が適しているのでしょうか。
天然歯に近い状態に回復する治療法として近年注目されているインプラント治療について説明します。
インプラント治療とは
そもそもインプラント治療とは、歯を失ったところの骨にインプラント体を埋め込み、被せ物をして状態を回復する治療法です。
義歯をしっかりと固定できるため、機能面では本物の歯のように優れています。
また、被せ物の素材は様々なものがあり、セラミックやジルコニアなどを使えば、天然の歯とほとんど変わらない見た目を手に入れられるでしょう。
インプラントの治療方法
基本的に、奥歯であってもインプラントの治療方法は他の場所の歯と変わりません。
治療方法は以下の通りです。
- 歯がなくなった部分の歯茎にインプラント体を埋め込む
- アバットメントという歯の土台となるものを装着する
- アバットメントの上に被せ物を装着する
インプラント治療は外科手術を伴うため、歯茎を切開する際は麻酔をして治療に臨みます。
奥歯のインプラントは難しい?
奥歯をインプラントにするのが上手くいくのか心配される方も多いでしょう。
一般的に、上顎の奥歯へのインプラント治療は特に難しいと言われています。
なぜなら、上顎の骨は下顎に比べると「皮質骨」と呼ばれる硬い部分が少なく、さらに「上顎洞(サイナス)」と呼ばれる空洞があるために、インプラントを埋め込むには確かな技術がなければ行えないからです。
前歯・奥歯に関わらず、インプラント治療は専門的な知識や技術力が必要となるため、治療を成功させるためには適切な歯科医院選びが重要となります。
奥歯をインプラントにするメリット
失った奥歯をインプラントにすると、入れ歯やブリッジでは得られない様々なメリットがあります。
奥歯をインプラントにするメリットについて詳しく紹介していきますので、治療法で悩んでいる方は参考にしてください。
痛みや違和感なく噛める
入れ歯は、つけているときに違和感を感じたり強く噛んだときなどに歯茎にあたって痛みを感じたりする場合があります。
ですが、インプラントは自分の歯のように噛めるため、入れ歯のような違和感はありません。
ストレスなく普段通りの生活ができるという点で、大きなメリットだと言えます。
しっかり噛めるようになる
入れ歯やブリッジは、食事中にズレたり外れたりする危険性があり、その際に痛みを伴う場合があります。
ですが、インプラントは顎の骨とインプラントがしっかり結合するため、強い力がかかっても外れたり破損することはありません。
そのため、他の治療法と比べてもしっかり噛めるようになり、食事が楽しめるでしょう。
発音がしやすくなる
インプラント治療を行えば、埋め込んだ部分は本物の歯と同じような機能を果たします。
入れ歯やブリッジの場合、義歯がズレてしまったり義歯と歯茎の間に隙間が生じて、発音がしっかりできない可能性もあるのです。
インプラントで埋め込んだ歯は基本的に、一度固定したらズレないため、発音がしやすくなるでしょう。
骨が痩せるのを防ぐ
顎の骨は、適度な負荷がかかっていなければ、徐々に痩せていきます(骨吸収)。
そのため、歯が抜けたまま放置していたり合わない入れ歯を使っていたりすると、骨がどんどん痩せていってしまう恐れがあるのです。インプラント治療を行うと、食事や会話による刺激が顎の骨に伝わるため、骨の量を維持できるでしょう。
奥歯をインプラントにするデメリット
インプラント治療は多くのメリットがある一方で、デメリットもあるのです。
奥歯をインプラントにするデメリットについて詳しく説明していきます。
奥歯に限らず、インプラント治療はリスクを伴うものですので、メリットやデメリットを理解し、他の治療法についてもよく知ったうえで自分に合う方法で治療を進めましょう。
治療費が高額になる
インプラント治療は基本的に保険適用がされないため、自費診療となります。
そのため、インプラント1本あたりの相場費用である30〜50万円程度を全額自己負担しなければなりません。
ただし、インプラントは他の治療法と比べて寿命が長く、しっかりメンテナンスを行えば半永久的に使えるため、長い目で見るとコストパフォーマンスに優れていると言えます。
治療期間が長くなる
インプラント治療は、入れ歯やブリッジに比べると治療期間が長くなる傾向にあります。
インプラント体と骨がしっかり結合するまで3ヶ月程度かかり、外科手術の後には回復するのを待たなければなりません。
早く奥歯を使えるようにしたいと思っていても、半年以上かかるケースが多いため、じっくり治療していく必要があると理解したうえで治療計画を立てましょう。
インプラント周囲炎のリスクがある
インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎になる恐れがあります。
これは、インプラント周辺の組織が炎症を起こす病気で、歯垢が溜まることで発症するのです。
奥歯は歯ブラシが届きにくい部分なので、歯磨きがしづらく、インプラント周囲炎を発症するリスクが高くなります。
予防するためには、徹底的なセルフケアや歯科医院での定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
適応できない症例がある
インプラント治療は、入れ歯やブリッジと比べて適応できる症例が少ないです。
そのため、奥歯をインプラントにしたいと思っていても断られるケースがあります。
インプラント治療が難しいケースを紹介しますので、チェックしておきましょう。
治療が難しいケース①顎の骨の量が少ない
インプラント治療は、骨の高さや量が十分でないと治療が行えません。
特に、上顎の奥歯にインプラントを埋入する場合は注意が必要で、上顎は骨が薄い方が多く、治療が難しいのです。
骨を増やす手術を行えば治療が受けられるケースもありますが、歯科医師によっては治療を断られる場合もあります。
治療が難しいケース②口腔内にトラブルを抱えている
虫歯や歯周病など、口腔内にトラブルを抱えている場合、治療を断られる場合があります。
歯周病菌がインプラント周囲の粘膜に感染すれば、インプラント周囲炎になる可能性があるからです。
奥歯にインプラントを入れたい場合、治療を先に終わらせてからの治療になるでしょう。
治療が難しいケース③持病や全身疾患を持っている
口腔内のトラブルだけではなく、以下のような持病や全身疾患がある場合もインプラント治療を受けられない可能性が高いです。
- 糖尿病
- 高血圧
- 心疾患
- 心身症
- 甲状腺
- 骨粗しょう症
感染症を引き起こしてしまったり、血液をさらさらにする薬を投与していれば、治療の際に出血が止まらなくなったりするなどのトラブルが起こりやすくなります。
そのため、インプラント治療を希望していても断られる場合があり、他の治療法をすすめられるかもしれません。インプラント以外の選択肢
歯を失った場合の治療法として、インプラント治療以外に以下の方法があります。
- 入れ歯
- ブリッジ
インプラント治療が行えない場合でも、上記の方法なら失った歯を補うことができる可能性があります。
それぞれの特徴を紹介していきますので、インプラント治療の特徴やメリット・デメリットとともにこちらも参考にしてください。
入れ歯
入れ歯は、歯がなくなった所の歯と歯茎の形を作り補う、取り外しが出来る装置です。
奥歯のみ失っている場合は、部分入れ歯が適用されます。
入れ歯治療は保険が適用になるため、比較的安く治療が行えます。
ただし、装置が外れてしまうリスクや審美的に劣ってしまうというデメリットもあるので注意が必要です。〇入れ歯治療のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・ほとんどの歯科医院で受けられる ・保険適用で安く作れる ・取り外してメンテナンスができる | ・金具部分が目立つ ・熱さや冷たさを感じにくい ・装着の違和感を感じやすい ・発音がしづらい ・歯がない部分の骨が痩せてしまう ・外れやすい ・噛む力が弱い |
ブリッジ
ブリッジは、歯を失った部分の両隣の歯を削り、それを土台にして一体型の上部構造を装着する治療法です。
入れ歯と違って取り外しがないため、違和感なく装着できます。
ただし、土台とする健康な歯を削らなければならないため、歯の寿命を早めてしまう危険性もあります。
〇ブリッジ治療のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
・装着の違和感が少ない ・入れ歯よりも強く噛まる ・保険適用で安く作れる ・自費診療で天然歯と差異ないものが作れる | ・健康な歯を削る必要がある ・土台となる部分に負担がかかる ・歯がない部分の骨が痩せていく場合がある ・隙間に食べ物が挟まりやすく虫歯や歯周病のリスクが高い ・発音が難しくなる場合がある |
奥歯がなくて困ったら歯科医院へ相談しましょう
奥歯のインプラント治療の特徴とメリット・デメリットについて解説しました。
奥歯は人が快適に過ごすために重要な役割を担っており、1本でも失うと大きな負担がかかります。
インプラント治療を行えば、天然歯と審美的にも機能面でもほとんど大差ない人工歯を手に入れられるので、奥歯を失った場合はそのままにせず、治療を検討してください。
ただし、インプラント治療はメリットだけでなくデメリットもあります。
他の治療法とも比較し、歯科医院へ相談したうえで自身に合ったベストな治療を選択していただけたらと思います。