歯周病は万病のもと?|知らないうちに進行してしまう歯周病の原因と対策方法
「歯周病」についてあなたはどのくらい知っていますか?この記事では「歯周病はどんな病気なのか」「進行が進むとどのような影響があるのか」など歯周病の原因と対策方法について分かりやすく解説します。また、歯周病を予防するために欠かせないセルフケアについてのポイントも紹介します。適切なケアを行うことでお口の中の健康を歯周病から守りましょう。
歯周病とは
歯周病とは、細菌の感染によって起こる炎症性の疾患で歯の周りにある歯茎が腫れたり、歯を支える骨が溶けだしてしまったりする病気です。歯周病の原因となる細菌は、プラーク(歯垢)という歯に付着したネバネバした汚れの中に潜む「歯周病菌」です。口の中の細菌がつくりだす酸によって歯が溶けて穴があく「虫歯」とはまた異なった疾患となります。厚生労働省が2011年に実施した歯科疾患実態調査の結果によると、40歳以上の日本人の約8割が歯周病に罹患しています。なぜ歯周病になるのか
歯と歯茎の境目である「歯肉溝」の清掃が行き届かずに汚れが残っていると「歯垢」や「歯石」がたまり、そこに棲みついた細菌が繁殖することで歯周病が起こります。歯周病は必ずかかる病気ではなく、汚れが日頃の歯磨きや歯科医院での定期健診等で除去できていれば予防ができるものなのです。歯周病の原因は?
歯周病の直接的な原因は先述のとおり「歯垢」や「歯石」の中や周りに棲みついている細菌で、細菌の出す毒素によって歯茎に炎症が起きます。また、歯周病は上記であげた直接的な原因のほかに間接的な原因となったり、歯周病を進行させる可能性が高いリスクファクター(危険因子)が潜んでいる場合があります。歯周病のリスクファクターとは
歯周病にかかりやすくなり、かかった場合に進行を早める「リスクファクター」には以下のようなものがあります。- 糖尿病
- 喫煙
- 歯ぎしり、くしばり
- ストレス
- 運動不足
- 睡眠不足
- 食習慣
- 不適合な冠や入れ歯
- 薬の長期服用
- 口呼吸
- 全身疾患(ホルモン異常、骨粗鬆症など)
- 免疫抑制剤の服用、または免疫の低下
- 噛み合わせが良くない
歯周病に自覚症状はある?
歯周病は先述のとおり非常に多くの人がかかる病気です。虫歯のように痛みが出たりといった自覚症状がほとんどないため歯科医院の定期健診などで歯周病が疑われたり、指摘されたりしても実感がわく人は少ないでしょう。しかし、自覚症状がないからといって放置してしまうと、どんどん進行していき最悪の場合には歯が抜け落ちてしまうことになります。歯周病はどのように進行していくのか
歯周病は歯肉炎といわれる状態から重度の歯周病に至るまで段階的に進行していきます。それぞれの段階の状態について解説します。健康な状態
健康な状態は歯茎が引き締まっており、歯と歯茎の間にある「歯周ポケット」の隙間は「1~2mm」程度です。歯肉炎
歯肉炎の状態になると歯垢(プラーク)によって歯茎に炎症が起き、歯周ポケットの隙間は「2~3mm」と少し深くなります。この段階ではクリーニングと丁寧なブラッシングで汚れをしっかり落とし、歯茎を引き締めていくことで進行を食い止めることができます。歯周炎(軽度)
軽度になると歯茎の炎症がひどくなり歯周病菌が歯周組織へと侵入している状態で、歯周ポケットの隙間も「3~5mm」と深さが進行しています。歯槽骨や歯根膜が細菌の毒素によって破壊されはじめます。歯周炎(中度)
中度になると歯茎の炎症がさらに拡大し、歯槽骨も半分ちかくまで破壊が進んできます。この段階になると歯がグラつきはじめ、歯周ポケットの深さも「4~7mm」にまで深くなっています。歯周炎(重度)
重度になると歯周ポケットの深さも6mm以上となり、歯槽骨が半分以上破壊された状態で歯はグラグラになります。歯茎の腫れや出血が気になったら
歯茎の腫れや歯磨きやデンタルフロスを使用した際に出血が気になる等があった場合は歯周病の可能性が疑われます。歯周病の治療は早ければ早いほど歯周病の進行を食い止めることにつながるので、すみやかに受診することが肝心です。初期の歯周病であれば改善が期待できるため適切な治療を受けましょう。歯周病と口臭の関係
口臭は多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、口臭は自分では気づきにくい場合が多いため気にしている人も少なくありません。歯周病の発症が口臭に影響を与えることがあるのかについて解説します。歯周病になると口臭が気になる?
結論からお伝えすると「虫歯」や「歯周病」が口臭の原因となるケースはあります。歯周病によって口臭が発生する場合は「メチルメルカプタン」と呼ばれる歯周病菌が食べかすなどに含まれるたんぱく質を分解する過程でつくりだすガスが原因でとても強烈な臭いがします。重症じゃなくても発生する歯周病の症状の一つで、「玉ねぎが腐ったような臭い」と言われたりします。さまざまな口臭の原因
口臭の発生原因は主に食べたものだと考える人は少なくありません。しかし実際には食品以外にも次のようなさまざまな口臭発生の原因があります。生理的な口臭
起きてすぐの口臭が気になったことはありませんか。起床直後や空腹時などは口の中の細菌が増殖することにより健康な人であっても口臭が発生することがあります。歯磨きや食事をすることで生理的な要因の口臭は減少します。外因による口臭
ニンニクやネギなどの香りの強い食品やお酒、またはタバコなどの外的な要因による口臭。ほとんどの場合、時間の経過とともに自然と口臭が弱まります。心因性の口臭
口臭の検査でも口臭が検知されていないのに本人だけが口臭を気にしているケース。自臭症ともいわれ、本人の思い込みで起こっている口臭です。病的な原因の口臭
口臭には歯周病や虫歯などの口の中の病気が原因で発生する口臭だけでなく、糖尿病や肝臓病、胃が悪い時など身体の病気が原因で発生する全身由来の口臭があります。歯周病が悪化するとどうなる
歯周病は重度に進行し歯槽骨が溶けて歯がグラグラするようになったら末期の症状といえます。歯茎はブヨブヨとして口臭もひどくなり、歯根が露出して膿が出ることもあります。歯のグラつきがさらに進んでいくと痛くて噛めない状態となり、やがて歯が抜け落ちてしまいます。歯を失ってしまう
重度の歯周病は最終的に歯が抜けてしまいます。歯が抜けてしまうまで放置してしまった場合、アゴの骨はかなりボロボロになってしまっていることが予想されます。その場合、自己治癒力での回復は難しいですが適切な治療でアゴの骨を再生できれば回復の可能性はあります。全身の疾患にも影響を及ぼす
歯周病を慢性的に患っていると歯周病菌が歯茎の血管に進入し、そこから全身へと広がりさまざまな臓器に悪影響が出ることが考えられます。心臓血管疾患や脳卒中(脳梗塞)、糖尿病の悪化、早産や低体重児の出産などを引き起こす危険性があるほか、歯周病菌が誤って気道から気管支、肺へ入った場合は気管支炎、肺炎(誤嚥性肺炎)の原因になることもあります。歯周病の治療費はどのくらいかかるの?
歯周病の治療費は個々の口の中の状態や自由診療か保険診療かによって大きく変わってきます。歯周病の進行具合によって治療法も異なりますし、歯周病が重度の場合には手術も必要になってくるからです。また、複数回の通院が必要となるため治療費の総額は「1回あたりの費用」×「通院回数」です。歯周病の進行具合別の治療費用
歯周病治療の段階ごとの治療費の目安(保険適用の場合)について解説します。軽度の歯周病
- 費用:総額4,000~6,000円程度
- 期間:1~2か月程度(通院:2~3回)
中等度の歯周病
- 費用:総額10,000~14,000円程度
- 期間:2~4か月程度(通院:5~7回)
重度の歯周病
- 費用:総額14,000~18,000円程度
- 期間:4~5か月程度(通院:7~9回)