コラム

HOME 投稿 コラム ドックベストセメントとは?流れや安全性・メリット&デメリットまで

ドックベストセメントとは?流れや安全性・メリット&デメリットまで

 2002年にアメリカで製品化されたドックベストセメントが、日本で用いられるようになったのは2006年のことです。比較的新しい虫歯の治療法で、まだどのような治療法なのかよくわからないという方も多いでしょう。ドックベストセメントの治療法について、手順や流れ、安全性は確かなのか、またどのくらい費用はかかるのか、など、ドックベストセメントという虫歯の治療方法についてご紹介します。

ドックベストセメントの基礎知識

ドックベストセメントとはどのような治療法なのでしょうか。治療法やドックベストセメントの歴史について、少しご説明します。
  • ドックベストセメントとは
  • ドックベストセメントの歴史

ドックベストセメントとは

ドックベストセメントとは、アメリカから始まった虫歯の治療方法です。虫歯治療といえば、罹患部分を削ったり、進行している場合は神経を抜くという処置が一般的です。しかしドックベストセメントは抜かない、削らない治療法で、自然治癒力を生かした方法といえます。「ドックベストセメント」とはペーストの名前で、ミネラル成分が入っており、虫歯を無菌化させられるお薬です。自分の歯を長持ちさせられる方法として、虫歯治療の新しい選択肢の一つとなりました。

ドックベストセメントの歴史

日本では埼玉県の開業医・小峰一雄先生が紹介したことで、知られるようになったドックベストセメント。アメリカではドック・ホリデーという医師により、1870年代には銅が虫歯の殺菌作用があるとわかっていました。しかし銅は毒性が強くて体に害を与えるという理由から、この治療法はしばらく広がりませんでした。1990年代に別の医師が研究を再開させたことで、現在のドックベストセメントができあがりました。ドック・ホリデーの名が、ドックベストセメントの名前の由来という説もあります。

ドックベストセメントの流れ

ドックベストセメントの治療の流れは、どのようになるのでしょうか。治療の手順と、治療期間などは以下のとおりです。
  • ドックベストセメントの流れ
  • 虫歯を削るのは最小限
  • 半年以上時間がかかる

ドックベルトセメントの流れ

ドックベストセメントの治療の流れは、以下の流れになります。
  • カウンセリング&洗浄
  • 虫歯の除去
  • ドックベストセメントを塗る
  • 詰め物をして終了
  • 半年かけて再石灰化
  • 最後に被せ物
何度も通院する治療方法ではありませんので、通院回数は少ないです。

虫歯を削るのは最小限

虫歯でも治癒可能な部分は残すので、従来の治療よりも削る範囲は小さくなります。神経にダメージを与えるほど削らずにすみますので、歯への負担も少ないです。もう元に戻せないと判断した罹患部分のみを削ります。

半年以上時間がかかる

ドックベストセメントの治療は、ドックベストセメントペーストを塗ってから半年~1年ほど時間をおきます。ドックベストセメントの殺菌力によって、この時間で虫歯を殺菌していきます。時間をかけて歯が再生し、柔らかなってしまった虫歯を硬くしてくれます。最終的な被せ物をつければ、ドックベストセメントの治療は終了です。

ドックベストセメント安全性は?

ドックベストセメントは、アメリカ歯科医師会「ADA」の、許可を受けた安全性の高い治療法です。アメリカでは一般的な虫歯治療の選択肢のひとつとなっています。ミネラルが主成分なので、薬剤のアレルギーの心配もなく、多くの方に使用できます。

ドックベストセメントのメリット

ドックベストセメントはメリットの多い治療法です。どのような点がメリットとして挙げられるのか、確認しておきましょう。
  • 治療の回数が少ない
  • 削る範囲が狭く、痛みが少ない
  • 麻酔が不要
  • 歯の神経を残せる
  • 治療後の虫歯リスクが低い
  • 副作用の心配がない
1つずつ詳しくご説明します。

治療の回数が少ない

ドックベストセメントは、ペーストを塗った後は時間をおきます。時間をかけて歯の再石化が進んでいますが、その間は通院の必要はありません。そのため通院治療の回数が少なくなるというのが、ドックベストセメントのひとつのメリットです。逆に時間はかかりますので、短期間で治療を終えてしまいたいという希望がある場合には不向きかもしれません。

削る範囲が狭く痛みが少ない

ドックベストセメントは、虫歯菌を殺菌して治療する方法です。虫歯の治療が痛いのは削る時なので、削る必要がなければ痛みもありません。また余分な部分を削ってしまう心配もなく、ご自身の歯を可能な限り残せます。

麻酔が不要

虫歯治療で痛みがないので、麻酔が不要になります。歯科治療での浸潤麻酔は2~3時間効き目があり、治療直後に痺れや違和感が残ったり、食事ができないという悩みがありました。麻酔をするのが怖い、痛いと感じる方もいますので、麻酔がないこと自体がメリットといえるでしょう。

歯の神経を残せる

ドックベストセメントは虫歯の大部分を削らずに済みますので、神経に到達することはほとんどありません。虫歯を残したままドックベストセメントを塗りますが、虫歯が残った部分は無菌化されて再石化させていきます。歯の神経をとってしまうと、歯の寿命が短くなるなどデメリットが多くあります。神経をとらずに自分の歯を残せるので、将来的にみてもメリットの多い治療法です。

治療後の虫歯リスクが低い

ドックベストセメントを歯に塗ると、金属イオンの虫歯菌の殺菌パワーが半永久的に続くといわれています。そのためドックベストセメントで治療をした歯は、将来的に虫歯になるリスクが低くなります。ただし絶対に虫歯にならないという保証はできませんので、気を抜きすぎないようにしてください。

副作用の心配がない

アメリカでは一般的な治療法となっている安全性の高いドックベストセメントは、副作用も少ないです。ドックベストセメントの成分が金属やミネラルなのが大きな理由で、妊婦や授乳中の方、子供でも使用できるほど安全性が高いです。妊娠中の虫歯は胎児にもよくありませんので、安心できる治療のひとつとして覚えておきましょう。

ドックベストセメントの成分

ドックベストセメントには、以下のような成分が含まれています。
  • 酸化亜鉛
  • 酸化マグネシウム
  • ビスマス
  • シリカ
  • 酸化鉄
  • 塩化銀
銅イオンと鉄イオンの双方のパワーで虫歯を殺菌し、ミネラル成分で歯の再石灰化を促します。多くの方に副作用なく安心して使用できる薬剤ですが、体質などにより注意が必要な場合もあります。

ドックベストセメントのデメリット

メリットの多いドックベストセメントは、デメリットもあります。どんなに優れた治療でもデメリットのない治療方法は存在しませんので、デメリットも正しく理解しなくてはいけません。ドックベストセメントのデメリットには、以下のような点が挙げられます。
  • 保険適用外の治療で高額に
  • 虫歯の進行具合によっては適さない
  • 金属アレルギーの方は注意

保険適用外の治療で高額に

ドックベストセメントは日本では保険適用外の治療となり、費用が高額になってしまうのがデメリットです。一般的な虫歯治療として浸透していない、大きな理由といえるでしょう。

ドックベストセメントの費用

ドックベストセメントの費用は、1本7,000円~20,000円程度が目安となります。クリニックによって値段は異なりますので、確認をしてから治療をスタートすると安心です。例えば、1本5,000円という表記があったとしても、被せ物の費用が追加で必要になる場合もありますので、ドックベストセメントのトータルの費用を把握できるようにしましょう。

虫歯の進行具合によっては適さない

虫歯の進行具合は、C1~C4というレベルで表されます。Cとは、虫歯を英語に訳した際の「Caries(カリエス)」が由来です。
C0虫歯の疑い
C1初期の小さな虫歯
C2中程度の虫歯
C3神経を抜くほどの虫歯
C4歯冠がない抜歯レベルの大きな虫歯
スクロールできますドックベストセメントは、C2~C3程度の虫歯での治療として用いられます。虫歯の進行具合によっては他の治療方法の方が適している場合もありますので、まずはお口の状況を診てもらって治療法を決めていきましょう。

金属アレルギーの方は注意

ドックベストセメントの成分はミネラルや金属で、金属アレルギーの方の場合は注意が必要です。マグネシウムや銅などが含まれますので、金属アレルギーの方はドックベストセメントの治療前に医師に相談してください。

歯を削らない治療方法

ドックベストセメントは、歯を削らない虫歯の治療法です。他にも歯を削らない治療法は存在しますので、ご紹介します。
  • ヒールオゾン治療
  • カリソルブ治療
  • プラズマレーザー
  • ウェルデンツ
治療方法を決める際の参考になさってください。

ヒールオゾン治療

オゾンを照らして虫歯菌をやっつける治療法がヒールオゾン治療です。オゾンには高い殺菌力があり、ドイツなどのヨーロッパ諸国では広く用いられています。40~60秒間の短い時間、オゾンを照射したら治療は終了です。痛みはもちろんありませんので、子供でも安心して受けられます。C1のようなほとんど穴のあいていない虫歯であれば、自分の歯をそのまま残せます。

カリソルブ治療

カリソルブという薬で、虫歯を削らずに柔らかくして専用の器具で取り除くのがカリソルブ治療です。カリソルブを虫歯に塗って30秒したら、手動の器具で取り除き、詰め物をしたら治療終了です。痛みもなく、治療時間も短いので負担がありません。C1~C2の虫歯で用いられる方法で、それ以上進んでしまうとカリソルブ治療は向きません。

プラズマレーザー

光のパワーと高い熱エネルギーのレーザーで、虫歯や歯周病治療、ホワイトニングにも用いられるのがプラズマレーザーです。痛みがないので麻酔も不要で、歯を削らずに治療ができます。C2~C3程度の虫歯に適した方法で、ドックベストセメントの前にプラズマレーザーを照射して治療期間を短縮させられる場合もあります。

ウェルデンツ

ウェルデンツとは特殊な樹脂で作成された入れ歯です。歯を削らないブリッジで、弾力性があり丈夫で軽いのが特徴です。入れ歯を支える周りの歯への負担も少なく、従来の入れ歯で悩んでいた方の悩み解消にもなります。C4レベルの虫歯の方が、インプラントやブリッジなどと比較して選択できる治療法です。

歯の神経を抜くリスク

歯を削る治療は、後に歯の神経を抜く場合があります。神経を抜くと痛みがなくなったり、感染が抑えられたりというメリットがあります。メリットがある一方、デメリットが多いということも理解しておく必要があります。歯の神経を抜くデメリットには、以下のような点が挙げられます。
  • 歯が割れやすくなる
  • 歯周病になりやすい
  • 歯の寿命が短くなる

歯が割れやすくなる

神経のない歯は、栄養が届きにくいため弱ってしまいます。抜髄した歯が割れてしまうと、そこから細菌が入って歯茎が腫れたり、膿が出たりしてしまいます。時間が経つにつれて歯が死んだような状態となり痛みも感じないので、トラブルが起きても気づきにくくなってしまいます。

歯周病になりやすい

 神経を抜いた歯は虫歯による痛みは感じなくなりますが、歯周病の痛みは感じます。日本人が歯を失う理由第一位は歯周病で、ポピュラーな病気と捉えられがちですが、抜髄した歯は歯周病のリスクが上がります。歯の間に物が挟まりやすくなった気がする、口臭が気になる、など日常的な異変が歯周病のサインになることもあります。

歯の寿命が短くなる

 歯の神経がなくなると、さまざまな要因で歯の寿命が短くなります。一般的な歯の寿命よりも10年短くなるといわれており、長く自分の歯を維持していくのが難しい状況になります。歯がなくなると咀嚼に問題が出るだけではなく、認知症のリスクが上がるなどの問題があります。若い頃から歯を大切に保ち、生涯を通して自分の歯を維持できるよう努めるべきです。

ドックベストセメントで後悔

 ドックベストセメントの成功率は80~90%だといわれています。きちんと治療をしたはずなのに違和感が残っていて、他院で診察をしたらドックベストセメントで治療済みの歯の虫歯が進行していたという例もあります。知らないうちに虫歯が神経まで到達していたというケースもあります。ドックベストセメントをする歯科医院は、慎重に選ぶようにしましょう。

最適な治療法を選択しよう

 虫歯治療の方法は、ひとつではありません。ドックベストセメントも選択肢のひとつであり、万人に最適な方法とは言い切れません。お口の状況や虫歯の進行具合などにより、総合的に判断して最適な治療方法を選択するべきです。ドックベストセメントのような削らない治療法も視野に入れながら、1本でも多く自分の歯を残していけるようケアをしていきましょう。